超常学園騒動記 第1章                     BY  SINNHA

                                   キャラクター紹介→

 *1*


光の筋が幾本も交錯する、闇の中で、響く、少女の声。
「・・人が、二人・・、・・『天秤』として、これは・・・・」少し、微笑んで。


暗闇の中で、
「・・う・・・」
白銀に黄金を織り込んだ髪の、純白の甲冑を纏った、美しい少年が、目覚めて、横たわっていた自らの身体を、起こす。
軽く、まだ少し朦朧としている頭を振り、「・・!」ふと気付いて、愕然と、辺りを探り、
傍らに、横たわっていた、尻の丸みのすぐ上まで届くストレートの、豊かな黒髪の、細身でいて要所要所が豊かな見事なプロポーションの肢体に、純白のハイレグビキニを纏った、可愛らしい少女に、気付いて、
「レナ!、レナ・・!、大丈夫か・・!?」と、揺り起こす。
少女が、レナが、目覚めて、「・・ぁ、レイナス様・・・?」と、可憐な声で。
大きく、溜め息をつき、「・・怪我は、無いな・・・」と、「神聖力による感知」で、レナの肉体を診察する、レイナス。
頬を染めながら、「レイナス様こそ、大丈夫ですか・・?」と、レナ。
「・・俺の心配なんかするなと言っただろう・・?」些か、突き放す様に、レイナス。
「・・レイナス様・・・」憂いを帯びた、眼差しで、それでも、「魔力による感知」で、レイナスの肉体を診察する、レナ。「・・お怪我は、無いですね・・・」
数瞬、二人共沈黙したまま、見つめ合って。
 
不意に、暗闇を切り取る様に、扉が開いて、明るい光が溢れて、
逆光の中の、少女のシルエットが、「二人共ー、怪我とかしてませんかあー?」と、脳天気な、可愛らしい声で。
咄嗟に立ちあがり、レナを背後に、腰の白銀の剣の柄に手を掛ける、レイナス。少女のシルエットから、「魔の気配」を、感じたのだ。
「!、うゎ、殺気だってるー。もう、心配しなくても何も悪い事しないからあ。」
と、レイナスの剣を見て尚笑顔で、脳天気な声で、少女が。
年の頃はレナと同じくらいの12、3歳。背丈はレナより数センチ程高い150センチ弱、澄んだ紺色のストレートの豊かな髪が細いウェストのくびれの辺りまで伸ばされていて、レナに優るとも劣らない見事なプロポーションの、可愛らしい少女である。
レナがおとなしい印象なのに比べて、こちらの少女は、明るく活発な印象だ。
「わたし、マイカっていうの!。よろしくね!」と、少女が。
 
 
数日後、「アメジスティア・アカデミー中等部」の校門前にて、

半袖の白のカッターに、黒の学生服のズボン姿の、レイナスと、半袖のセーラー夏服に、太股が殆ど露出するミニのプリーツスカート姿の、レナが、茫然と。
「と、いうわけだから、よろしくね!」と、レナと同じ衣装の、マイカが、脳天気な笑顔で。
「それでどう分かれというのだお前はー!!」と、学生鞄で派手に勢い良くマイカの頭をはたく、年の頃14、5歳の、一人の少年。
紫水晶に輝く髪の、黙っていさえすれば、「少し妖しさを秘めた絶世の美少年」、
で、通用したかもしれないが、
マイカと組み合わせると、そんな印象も、どこか遠くへ旅に出てしまいそうだ。
「ひどいー、アドニスー、何でぶつのー?」地面にうつ伏せに大の字になっているマイカが、間の抜けた泣き声で。ミニのプリーツスカートがまくれて、純白のスキャンティが丸見えになってしまっている。
思わず見てしまっている、どことなく、「むっつりすけべ」と呼ばれそうな印象の、レイナス。
傍らで、少し頬を染めて、レイナスの表情を見つめつつ、何となくむくれて、少し拗ねている、レナ。
「誰だ、マイカに案内役なんかやらせたのは。」腕を組んで、アドニス。
「あんたでしょうが!」即座に立ちあがってアドニスに怒鳴る、マイカ。
「そうだったか?」他人事の様に、しれっと、アドニス。
「この口はー!、この口はあー!!」アドニスの髪を掴んで取っ組み合うマイカ。
「暴力はよせ暴力は!」とかいいながら、マイカの頭をぽかぽかと拳骨で殴っているアドニス。大して力は入れてはいないが。
「・・あの、二人共・・!」と、質問を求める仕草で手を上げるレイナス。何かに耐えている表情で、少し肩を震わせて。
「んー、なあにー?」と、脳天気に、マイカ。アドニスと取っ組み合っている姿勢のままで。
少し、強く、肩を震わせて、「・・何で、俺達が、唐突に、『学問の徒』とならねばならないのか、その理由を聞いても、構わないだろうか・・?」と、レイナスが。
「・・聞いてから後悔しても遅いぞ・・?」と、不敵な印象を、装いつつ、微笑んで、アドニス。
「構わん。知らない方がより危険だと判断した。」と、真剣な眼差しで、レイナス。
アドニスと、レイナスの、何れ劣らぬ美少年同士の、見つめ合う、眼差しに、思わず、たじろぐ、レナ。何を思ったのかは知らないが。
「・・僕には言えない。」如何にもわざとらしく、アドニス。
「それでどう分かれというのだあー!?」優美に、ジャンプして、曲線の美しい長い脚をアドニスの頭に撃ち込む、マイカ。
「ぐぅ、良い質問だ・・!」わざとらしい笑顔のまま、倒れる、アドニス。どうも、気絶したふりくさい。
途方に暮れて、「・・レイナス様、わたし達、これからどうなってしまうんでしょうか・・?」と、青ざめた表情で、レナ。
校門の向こうの、校舎を、憤りを湛えた眼差しで睨み据えている、レイナス。
「・・分からん。この先に、一体何が待ち構えているというのだ・・!?」


 *2*


待ち構えていたのは、生徒達の好奇心に満ちた笑顔の集中砲火と、如何にも唐突な、日本語と、数学と、ラテン語と、政治経済と、古典日本語と、その他もろもろの授業であった。
2年に編入されたレイナスは、政治経済に関しては全く問題無かったものの、他の授業はとてつもない苦戦となり、特に古典日本語は、「・・この教科書を斬首刑に処する事が出来たら・・・!!」と、危うく抜刀し掛ける有様であった。
レイナス本人は、表情は100%本気でも実際はあくまでも冗談のつもりで、周囲の反応を見ていたのだが、生徒達も「おおう!やるではないか転校生!」「やれ!、やってしまえ!!」「それでこそ男だ・・!」等々、動じる様子が無く、
教師は教師で、「斬った教科書と机を弁償する気が有るのなら、やれ。但し、古流日本剣術の補修を放課後にやるから、そのつもりで。・・心して掛かってこいよ、西洋剣士君・・!」と、妙に冷静に微笑んで見せたりするものだから、(・・こいつ等一体何者だ・・!?)と、レイナスの不信は一層増してしまったのだった。
1年に編入されたレナは、数学に関しては全く問題無し、語学関係は初めてにしては意外に良好、と、授業は何とかなったの、だが、
休憩時間、「デートしよう!、デート!」は、まだ良い方で、「レナちゃんラブホテルって行った事ある?」から、果ては、「結婚して下さい・・!」「俺の子を生んでくれ・・!」まで、有象無象の大群に取り囲まれて危うく卒倒しそうになり、そこへレイナスが乱入して、「散れ・・!、命が惜しいなら・・・!!」と、抜刀し、大乱闘騒ぎとなってしまった。
それでいて、死人はおろか重傷者も出なかったのだから、不思議と言おうか、何と言おうか。

放課後、
結局、古流日本剣術の補修に呼び出されてしまったのだが、内心、実は興味津々で結構張り切って道場にやってきた、純白の甲冑姿のレイナスを、剣道着姿の古典日本語教師と、何故かマイカが待ち受けていた。
心配そうな顔をして、レナが、見に来ていた。
「・・私が相手するつもりだったんだが、・・どうしても彼女が、相手したいと言うものだからね。」と、古典日本語教師。
「・・帰らせて頂いて構わないでしょうか。」落胆も露骨に、レイナス。
「・・彼女は、私より強いぞ・・?」と、古典日本語教師。
悪戯っぽく微笑んでいるマイカ。
返し掛けた踵を、また反転させて、マイカを見つめる、レイナス。(・・あの時感じた魔の気配は、気のせいではなかったと・・!?)

右手を天頂方向へ高く掲げて、親指を水平方向に、人差し指を天頂方向に伸ばし、残りの指を握って、左手は軽く腰に添えて構える、マイカ。
「ムーン・フェアリーッ!、オペレーション!!」マイカの、澄んだ叫びと共に、マイカの右手の人差し指から白い光が迸って、マイカの全身を包み込み、
一瞬、生まれたままのマイカの肢体のシルエットが、光に包まれて、
その光が消えた後には、全く違う衣装を纏ったマイカが。
澄んだ紺色のハイレグビキニ、両膝から両つま先までを覆う紺色のブーツ、両手首に純白の薄いブレスレット、細い首には楕円球形のルビーを縦にあしらった純白のチョーカー、右の太股の半ばより少し上辺りに紺色のベルトで止めてある紺色皮製のガンケース、その中には、リボルバータイプの紺色の拳銃、らしきものが。
華奢な様でいて要所要所が優美に発育した、レナよりも心持ち大胆な印象のプロポーションが、可愛らしい臍が、血色の美しい白い柔肌が、思い切り良くさらけ出されている。
「トランスフォーメイション!?。能力付与の一方式として、噂だけは聞いた事があるが・・、」驚きを隠せないレイナス。
「もうっ、そーゆーややこしい言い方して欲しくないなあ。『愛と正義の美少女戦士ムーンフェアリー』、って、呼んで欲しいんだけど。」無邪気に微笑んで、マイカ。
「・・どこの与太話だ?」あきれて、レイナス。
「あうぅ・・!」思いっきりずっこけるマイカ。「・・って失れーねー!!、誰が与太話なのよ誰がー!!?」頬を紅くして。
「あんたが。」と、レイナス。
「なあんですってえ!!?」素っ頓狂な声を上げて、左の腰元に両手をやるマイカ。
「!!」半ば無意識に、一歩後退り、一筋の汗を頬に伝わせる、レイナス。
何時の間にか、マイカの左の腰元に一振りの日本刀が出現していた。白木の鞘に白木の柄、鍔無し、といったデザインだが、鞘も柄も白木の部分は全て白銀に輝いており、白木を白銀に変化させた様な印象である。
一見、日本刀の鞘を左手に、右手は軽く柄に添えているだけの体勢で、一瞬の内にマイカが素早くレイナス目掛けて踏み込んだ、だけ、に、見えるのだが、
(・・退かなければ、斬られていた・・!?)と、確かに、風を斬る見えない刃を、感じた、様に思えてしまう、レイナスなのであった。
「・・抜刀術か・・?」と、押さえた声で、レイナス。
「・・気付いたの・・?」と、静かに微笑むマイカは、少し不敵な印象に、見えなくもない。
「・・聞いた事がある。確か極東の剣術で、『居合』、とかいう、一瞬の内に抜刀して相手を斬り剣を鞘に収める、決して剣筋を相手に見せない剣術だと・・。」鋭い眼差しで、レイナス。
「見切られてかわされちゃったんだから、まあ、あれなんだけどね。」無邪気に微笑んで、マイカ。
真剣な眼差しで、「・・油断も隙も無い与太話だな。」と、レイナス。
「あう・・!!」と、ずっこけるマイカ。
「・・だから何で与太話なのよー!?」
次の瞬間、蝶の羽の形をした、澄んだ青を淡く刷いた、澄んだ純白の、大型の、光の羽根が、マイカの背中から現れ、光の羽根から無数の光の粒を周囲に舞わせつつ、マイカは、飛翔した。
「・・いくわよー!」と、レイナス目掛けて、急降下する。
咄嗟に、「ハァ・・ッ!!」全身に純白の光を纏って、飛翔したレイナスは、危うい所で、マイカの優美な体捌きと共に撃ち込まれた回転蹴りを、かわした。
「・・その動きは、フィギュアスケート・・!?」
「だってわたしフィギュアスケート部員なんだもん・・!」と、笑顔で、マイカ。
次の瞬間には、頭上に逃れたレイナスの足元を、飛翔しつつのクァドラプルスピン4回転蹴りで狙い、体勢を崩しかけたレイナスに、すかさず居合抜きを撃ち込む。
今まで呆然とレイナスとマイカのやり取りを見ていたレナが、「!、レイナス様・・!!」と、悲鳴を上げる。マイカの剣に斬られてしまった様にしか、レナには見えなかったのだ。
「!」寸前で、必死に、背後方向に飛翔し、マイカの剣をかわしたレイナスは、壁に背中が当たる少し手前で漸く停止した。マイカの様に器用に飛ぶのは到底無理な事を、レイナス自身が身体で知っている。
「・・とんでもないな・・!」
次の瞬間、レイナスは、道場の外へと飛び出した。(狭い部屋の中じゃ、勝ち目はなさそうだ・・!)
「レイナス様・・!!」慌てて、後を追って道場の外へ駆け出す、レナ。(・・マイカさん凄い・・!、本気のレイナス様が苦戦してる・・!)


 *3*


レイナスの後を追って、道場の外へ飛び出す、マイカ。(・・上・・!)と、見上げると、道場の屋根の上に、仁王立ちのレイナスが。
「・・いっくぞおおおおっ!!!」と、白銀の剣を大きく頭上に両手で振りかざして、飛び降り様にマイカに斬り付けるレイナス。
レイナスの剣は、片手でも両手でも扱いに支障が無い様に調整して造られている、片手半剣、バスタードソードに分類されるタイプなのである。
頭上からの斬撃に動揺する事なく、マイカが、「ハ・・!」と、上空へ飛翔しつつ居合抜きを放って、レイナスを迎え撃つ。
「!」互いに、斬る寸前で、レイナスとマイカ、双方が、宙で擦れ違い、上空で身を翻したマイカが、「タァーーーッ!!!」と、飛び蹴りを、レイナス目掛けて。
体勢を崩して着地した、レイナスに、「!、レイナス様!!」と、悲鳴を上げるレナ。
次の瞬間、体勢を崩した様にレナには見えていたレイナスが、危な気無く、地面を蹴って飛翔し、「ハァ・・ッ!!」と、左斜め下から右斜め上に斬り上げて、マイカの蹴り込んでくる、脚を、狙う。
「!」斬られる寸前で脚を引いて体勢を変え、宙で急停止して、両手で真剣白刃取りにレイナスの剣を捕える、マイカ。「・・やるわね、レイナス君。」と、感心した表情で。
「・・これだけやって剣を取られるとはな。ただもんじゃないな、あんた・・。」
と、ほのかに苦味を帯びて、その割に悔しそうでもなく、レイナス。
「あんたはやめて欲しいなあ。マイカって呼んでよ。」無邪気に、微笑んで、マイカ。
「・・レイナス様・・。」落ち込む様子の無いレイナスに、安堵しつつも、やっぱり少し悔しそうな、レナ。
その、背後に、「・・隙有り。」と、漆黒の髪の妖しく美しい少年が。
詰襟のスーツ様の漆黒の衣装を纏い、背中には、漆黒の、鳥状の大きな羽根が、生えている。
「!!」愕然とするレナの肢体に、少年の、右腕から右手へと伝う、黒紫の触手が、今にも絡み付こうと。
「!」次の瞬間、レナの纏っているセーラー夏服越しに、レナの腹部から、紅紫の光が迸り、
その紅紫の光の中から、幾本もの、直径2センチ程の紅紫の触手が、獰猛にくねりな
がら、迸って、
漆黒の髪の少年の放った黒紫の触手を、激しく、弾き飛ばし、レナを護る様に、螺旋を描いて、レナの周囲を取り囲む。
「・・その触手、君の子宮に宿っているね。遺伝子は、半ば君、半ばは、レイナス君・・。」淡々と、レナに告げる、漆黒の髪の少年。
「・・!」愕然と、青ざめて、震える、レナ。
(!、レミリス君!、ちょっとやり過ぎよ・・!!)マイカから漆黒の髪の少年に、他の者には感知出来ない様に、少し怒った様な精神波動が。
(・・こちらがこの事を知っている事を、彼等に早めに伝えておくべきじゃないんですか、マイカ様・・?)ほのかに、批判を込めて、レミリス。
(そりゃそうだけど、もう少し伝え様ってものがあるでしょ!?。それと!、様付けはやめてよ・・!)些か憤慨した様に、マイカ。
(すいませんね、こういう性格なもので、マイカ様。)しれっと、レミリス。
(!!)怒りの精神波動が、マイカからレミリスへ。
数瞬、愕然と震えていたレイナスが、「・・貴様ぁあああ・・っ!!!」と、怒りも露わに、マイカに取られた剣を離して、右手から、3本の純白の光の矢を立て続けにレミリス目掛けて放つ。
「!」咄嗟に、レミリスから離れる、レナ。踊る様に曲線を描いて、そのレナを器用に避けて、レミリスを襲う、3本の純白の光の矢。
「・・」黒紫の、同心円状の光の波紋を、左手から放って、レイナスの純白の光の矢を、3本立て続けに黒紫の光の波紋で受け止めて、消してしまう、レミリス。
そこへ、「くらええええっ!!!!!」と、レイナスが、レミリス目掛けて急降下し、右手に純白の光を纏わせて、渾身の力を込めて、右拳を、撃ち込む。
レイナスの純白の光の矢に黒紫の光の波紋を消されてしまい、咄嗟に、レイナスの輝く右の拳を、左の掌で受け止める、レミリス。「・・なかなかやるね。」表情は、平然としている。
「・・レナを辱めるなら、俺が許さん・・!」と、レミリスを睨み据える、レイナス。
「・・レナ君を辱めたのは、君じゃないのか、レイナス君・・?」淡々と、レミリス。
「・・そうだ・・!」と、真っ直ぐにレミリスの瞳を見据えて、レイナス。
「・・俺がレナを辱めたんだ・・!。悪いのは俺だ、レナじゃない・・!!」
「・・・」
「・・だから、レナを傷付ける様な物言いをするなら、絶対に許す訳にはいかない・・!」

「・・レイナス様は、わたしを辱めてなんか、いません・・・!」と、真っ直ぐな瞳をレミリスに向けて、レナ。触手を背後に展開させて。
横目に、レナの瞳を見ている、レミリス。
「・・レイナス君は、君を、自分の肉欲の餌食にしたんじゃ、ないのか、レナ君・・?」
少し、震えて、「・・レイナス様の肉欲は承知の上で、わたし自身の意志で、レイナス様のお相手をしたんです。わたしの身体は、レイナス様のものです。レイナス様は、何も悪い事なんかしてないです・・!」少し、涙を浮かべて、それでも、真っ直ぐな、瞳で、レナ。
「・・レナ・・」どこか切なげに、レイナス。
「・・何でそう俺に都合のいい物言いばかりする・・!?。俺の犠牲になって、満足か・・!?。本当にそれでいいのか、レナ・・・!?」
「・・レイナス君、」淡々と、レミリス。
「・・そういう物言いをしながら、君はレナ君をそばにいさせつづけている。・・レナ君を餌食にし続けている。違うか・・?」
「違わない・・。」と、レイナス。
「わたしが、レイナス様のそばにいたいから、レイナス様のそばにいるだけです・・・!!」と、思わず、叫ぶ、レナ。
「・・俺には、どうしたらいいのか、正直、わからない・・。・・でも、それでも、俺は・・・!」少し、震えて、レイナス。
「・・俺は、何だい・・?」淡々と、レミリス。
「・・俺は・・・」
 
「何、人をいじめてるのよ・・!!?」不意に、レミリスの背後に少女が現れて、大型の剛剣を片手で掲げて、柄でレミリスの頭を、殴る。
背丈はマイカよりも低くレナよりも少し高い程度。淡くラベンダーを刷いた輝く純白の、ストレートの髪を、左サイドで纏めて、腰の少し上辺りまで届くポニーテールにしている。マイカよりは心持ち落ち着いた印象の見事なプロポーションに、ラベンダーを刷いた純白の、ハイレグビキニ、指先から肘までを覆う手袋、つま先から膝までのブーツを、着用。背中には、ラベンダーを刷いた純白の、鳥状の大きな羽根。
あどけない、愛らしい面差し。露出度の高いコスチュームと対照的な、真面目を絵に描いた様な、眼差し。
「随分と乱暴な登場だね、リミア。」振り向き気味に、頭を押さえつつ、しれっと、微笑んで、レミリス。
「乱暴なのはレミリスの方でしょ!?」と、ラベンダーを刷いた純白の髪の少女、リミアが、腹を立てた顔で。
「・・彼らにはね、これぐらいの事は直視して立ち向かってもらう必要がある、そう思ったんだよ。」ふと、口元は笑っていても真剣な眼差しで、レミリス。
「だからってこういうやり方はないでしょ!?」と、リミア。
「リミアちゃん。」と、傍らに来たマイカが、「わたしが許す。やっちゃって。」
と、腹を立てている笑顔で、腰に左手をやり、親指を立てた右拳を勢い良く半回転させて、親指を下向きに。
「・・マイカ様の御墨付きだからね、手加減しないわよ・・!!」
次の、一瞬の内に、リミアの、無数の拳と蹴りが、レミリスに撃ち込まれた。
打撲傷にまみれて、「ん、修行は順調の様だね、リミア。」と、それでもしれっと微笑んで、悠然と腕を組む、レミリス。
「・・何でこう、人を小馬鹿にした様な態度ばっかり取るの・・・!?」と、思い切り悔しそうに、リミア。

不意に、レイナスが、レミリスの打撲傷に左手をかざす。
レイナスの左手から、純白の光が放たれて、レミリスの打撲傷が、癒されていく。
「・・何のつもりだ・・?」と、レミリス。
「お前の性格が悪いのはよく分かった。」と、レイナス。
少し苦笑するレミリス。
「・・だが、お前の言わんとする事も、分かる気が、する。確かに、俺は、立ち向かわなくちゃならない・・。」真剣な瞳で、レイナス。
「・・どこまで分かってるのかな、レイナス君?」しれっと、レミリス。
「・・そう簡単に分かったら苦労は無い・・!」些か憤然と、レイナス。
触手達を紅紫の光に変えてみぞおちの辺りに収めながら、「・・わたしがそばにいたら、レイナス様に苦労させてしまいますか・・?」つらそうに、レナ。
「そういう問題じゃない!。大体何でレナが引け目を感じたりしなきゃならないんだ!。・・その、なんだ・・!、レナは、もっとこう、俺にこうして欲しいとか、ああして欲しいとか、言うべきだぞ・・!。その、俺みたいな鈍感な奴に、察してくれとか言われても、なあ・・・!」些か取り乱し気味に、レイナス。
数瞬の、間。
「・・ずうっと、おそばに、いさせて下さい・・・。」と、レイナスの胸に面差しを埋めて、泣いてしまう、レナ。
「・・俺なんかで良ければ、好きなだけそばにいろ。」そっけなさを装った言葉と、対照的に、強く、レナを両腕で抱きしめる、レイナス。
自然に、レイナスの唇と、レナの唇が、触れ合い、暫しの間、二人共、瞳を閉じて、互いの唇を、互いの想いを、感じ合って。
ほのかに苦笑気味に、穏やかに、見守っている、レミリス。
溜め息をついて、それでも、安心した様に、あたたかく、見守っている、リミア。
「・・やっぱり、大切なのは、お互いを想う気持ちよね・・。」妙に、感動した面持ちで、胸元で手と手を合わせて、瞳に涙まで浮かべている、マイカ。
ふと、我に帰って、頬を真紅に染めて恥らう、レナとレイナス。それでも、抱き合ったままだったりしている。
「・・それは良いんだけどリミアちゃんとついでにレミリス君、わたしに様付けだけはやめてもらえないかなあ・・?」と、とたんにやたら情けない声で、やたら情けない表情で、マイカ。
傍で、レイナスとレナが、抱き合ったままで、些かずっこける。
「わたしも何度でも言わせて頂きますけど!、マイカ様はもう少し御自分の立場というものをわきまえるべきなんじゃないですか!?、今日も何だか遊び半分にこんな事してですね・・!」声を張り上げ気味の御説教口調で、リミア。真面目を絵に描いた様な、眼差し。
「リミアちゃん頭堅過ぎー。」拗ねた幼稚園児の様な表情で、ぼやく、マイカ。
「マイカ様がすちゃらかで遊んでばかりでお調子者でいい加減で歩く与太話なだけでしょう!?」やたらにすらすらとまくし立てるリミア。
「・・・リミアちゃん、わたしの事嫌いぃ・・・?」瞳に涙を溜めて、胸元で手と手を合わせて、緊迫感の欠片も無く、マイカ。
「真面目にやって下さいと言ってるんです!」ぴしゃりと、リミア。
次の瞬間、
「リミアちゃん!、そこ!」と、叫んだ時には、既にマイカの抜いた紺色の拳銃が、妖しい爆音を上げて蒼い光の銃弾を放っており、その、蒼い光の銃弾は、危うくリミアの脇腹の白い柔肌をかすめて、背後の、二足歩行型で羽根の生えた黒紫の魔獣を、撃ち抜き、爆散させていた。
黒紫の魔獣が爆散するのと同時にその気配に気付いて、「うそ、いつの間に・・!?」愕然と、リミア。
「!」レイナスが、黒紫の魔獣が構えていた黒い弓矢がレナを狙っていた事に気付き、咄嗟に、周囲に鋭い視線を走らせ、「存在の波動」を、「神聖力による感知」で、探る。
次の瞬間、十数頭の黒紫の魔獣が、周囲に、姿を現す。
「言っておくが、僕の触手と色は同じでも、こいつらは僕の使役魔獣じゃないからね・・!」意外に真剣な口調で、レイナスの方へ、レミリス。
「分かってる!、お前が本気でレナを狙って、マイカが本気で迎え撃つなんて、そんなはずは無いんだろう・・!?」意外な程冷静に、レイナス。
「それとリミア!、修行が足りてない・・!」と、レミリス。
「反省する・・!」真面目に、応えつつ、剛剣を両手で構えて、戦闘体勢を取る、リミア。
震えつつ、「・・魔杖召喚・・!」と、垂直に地面から天頂へとそそり立つ紅い光の柱を、左手から放つ、レナ。
その、紅い光の柱の中から、全長2メートル程の先端が大型の鉤状に曲りくねった杖が現れて、レナの左手に収まり、レナが、いつでも魔法詠唱が可能な、構えを取る。
 
 
 *4*
 
 
十数頭の黒紫の魔獣が、一斉に、襲い掛かってくる。
「ハアアアッ!!!」先陣を切って、リミアが、純白の光を纏った剛剣を振りかざして、ラベンダーを刷いた純白の羽根を勢い良く羽ばたかせて、地面から少し浮いて、空中を突進し、1頭の魔獣を、真っ向から、縦一文字に両断し、黒紫の光の粒子へと、爆散させてしまう。
勢い余ってリミアの剛剣の先が地面に埋まってしまった所をすかさず襲う、もう1頭の魔獣目掛けて、隙を見せずに勢い良く地面から、心持ち左に薙ぎ上げた、リミアの剛剣を、
凄まじい素早さでかわして、黒紫の魔獣がリミアの背後に回り込み、
「!、・・うそ・・っ・・!」と、些か動揺しつつも、素早く振り向き様に、横薙ぎに撃ち込んだリミアの剛剣を、黒紫の魔獣が、剣で受け止める。
「・・こいつ等、只の魔獣じゃない・・!」自分の剛力を真っ向から剣で受け止められて、頬に汗を伝わせる、リミア。
その、リミアに、無数の、鷹の頭部を持つ蝙蝠の姿の、小型の黒紫の魔獣が、一斉に襲い掛かる。
「!!」小型の黒紫魔獣の、鋭い鷹の嘴が、無数に、リミアの白い柔肌に突き刺さる、寸前で、
「・・!」レミリスの放った無数の黒紫の触手が、複雑にくねり合い、凄まじい速度で、異様に美しく交錯する無数の曲線を描いて、宙を裂き、リミアを襲った無数の小型魔獣を、1頭残らず、全て、撃ち落してしまう。
「・・レミリス・・・」少し、言葉を失っているリミアに、「僕に助けられてる様じゃ、まだまだだぞ・・!」と、たしなめる様に、レミリス。レミリス自身の周囲に無数に群がる小型魔獣を、無数の黒紫の触手を駆使して次々に撃ち落しながら。
「・・」少し、俯き掛けて、「!」不意に、レミリスの背後に空間転移で現れた、二足歩行型の有翼黒紫魔獣に、愕然として、次の瞬間、「このおーーーっ!!!」手にした剛剣を、槍の様に、剛力を込めて投げる、リミア。
危うい所でリミアの剛剣を淡々とかわしたレミリスの、背後にいた二足歩行型の魔獣に、宙を撃ち抜いて飛んだリミアの剛剣が、重く、激しく突き刺さり、すかさずリミアが、素早く羽ばたいて突進し、魔獣に刺さった剛剣の柄を握り締めて、勢い良く、斬り上げて、魔獣の上半身を両断し、魔獣が、一溜りも無く、爆散する。
「わたしに助けられてどうするのよ・・!」素早くレミリスの背中に自分の背中を合わせて、振り向き気味に、お返しとばかりに、どこか子供っぽい口調で、リミア。
「・・全くだね、我ながら、よりにもよってリミアに助けられるなんて・・。」魔獣の群れと油断無く戦いながら、わざとらしくぼやく様な口調で、レミリス。
「・・どうしてそう意地悪な言い方ばっかりするの・・?」魔獣の群れと懸命に戦いながら、拗ねた様な口調で、リミア。
「・・僕も修行が足りてない。」妙に似合わない、真剣な眼差しで、レミリス。

「レイナス君!、レナちゃん!、無理して戦わなくていいから、とにかく自分の身を守る事を考えて!」と、真剣な眼差しで、右手で、鍔無し日本刀形状の白銀の剣を抜いて、胸元の高さで水平に構えて、魔獣の群れから二人をかばう様に、マイカ。
一歩、踏み出して、
「敵の数が多過ぎる。一人でも戦力は多い方がいい!・・それに、レナを狙う奴らを放っておけるか・・!」と、レナを背後にかばいつつ、片手半西洋型の白銀の剣を構える、レイナス。
「わたし、レイナス様に護られる為におそばにいるんじゃありません・・!。わたしだって、レイナス様を護りたいんです・・!」と、自分の身長よりも遥かに高い全長2メートル程の魔法の杖を、左手で、心持ち左斜めに傾けて立てて、レナ。
心打たれた様に、微笑んで、「・・二人共、気を付けてね・・!」と、マイカ。
幾頭もの二足歩行型の黒紫魔獣が、一斉に、レイナスに、巨大な斧を振りかざして襲い掛かる。
「・・っ!!」危うい所で幾本もの巨斧を、敏捷な脚捌きで次々にかわす、レイナス。
しかし、反撃する隙も見出すどころか、時折り触れ掛ける巨斧に、苦しげな表情を見せている。
「レイナス君!」と、援護に入ろうとしたマイカに、無数の鷹頭蝙蝠型小型魔獣と、幾頭もの二足歩行魔獣が、前後左右足元上空から一斉に襲い掛かる。
「!、スターダストッ!、リボン、ブレーードッ!!!」天頂目掛けて、左腕を、左の人差し指を、真っ直ぐに伸ばして、愛らしい声で澄んだ叫びを放つ、マイカ。
その、左の人差し指から、青白色の光のリボンが、渦を巻いて迸り、
マイカの周囲に縦横無尽に美しい光の曲線を描いて、無数の小型魔獣を次々と撃ち落し、すかさず、右手の剣で、二足歩行魔獣が斜め上から激しく撃ち込んだ巨大な斧ごと、その二足歩行魔獣を、横に、一刀両断にしてしまう。
それでも、次から次へと襲い掛かる魔獣達に、
「・・!」レイナスの援護に入れないでいる、マイカ。唇を、噛み締めて。
「・・ゼクウォート・リィ=フォム・バルナート・・!」
魔法言語を詠唱するレナの、左手で構えた杖の先端が、紅い光を放ち、
「・・クリムゾンッ・アローーッ!」レナの、澄んだあどけない叫びと共に、幾本もの大型の真紅の光の矢が杖の先端から迸り、
幾本もの、優美な真紅の光の曲線を描いて、レイナスを襲う二足歩行型黒紫魔獣を、4頭、一気に撃ち抜いて、吹き飛ばし、無数の真紅の光の粒に、砕いてしまう。
二足歩行魔獣がたじろいだ一瞬の隙を、逃す事なく、レイナスの俊敏な脚捌きと共に、レイナスの剣が、右に、左に、踊る様に、3頭の二足歩行魔獣を一気に斬り裂いて、無数の白銀の光の粒に、砕いてしまう。
「やるうっ!、二人共おっ!」笑顔で叫んだマイカの瞳に、幾頭もの大型の蝙蝠型魔獣が、レナ目掛けて、今にも光条を吐こうと、酷く開いた口から黒赤色の光の粒を放っているのが、映る。
「!、レナちゃん危ないっ!!」と、マイカの紺色の拳銃が、殆ど一瞬の内に6回の妖しい爆音を放ち、6発の蒼い光の銃弾が、6頭の、大型の蝙蝠型魔獣を、殆ど一瞬で、無数の蒼い光の粒に撃ち砕く。
マイカの連射が途切れた隙を突いて、数頭の蝙蝠型魔獣が、レナ目掛けて、黒赤色の光条を放つ。
「させるかあっ・・!!」レイナスが、レナを背後にかばって割って入り、胸元に横向き水平に白銀の剣を両手で構え、剣と両手から純白の光を放って、数本の黒赤色の光条を、受け止める。
黒赤色の光条を消滅させたものの、激しい衝撃に、「・・っ!」レイナスの体勢が、揺らぐ。
不意に、マイカの周囲に、無数の鷹頭蝙蝠型小型魔獣が出現し、
「!」マイカがスターダスト・リボン・ブレードで応戦するのと、体勢を崩したレイナスの左脇、心臓目掛けて、今までの攻撃と全く別の方向から、1頭の、一段と大型の蝙蝠型魔獣が、激しい黒赤色の光条を放とうとしている様子が、レナの瞳に映るのが、同時であった。
「!、レイナス様!!」咄嗟に、瞬間、全身に紅紫の光を纏い、瞬間移動に近いスピードでレイナスを背後にかばって割って入り、杖を左手で横向き水平気味斜めに構え、右手を添え、杖と両手から真紅の光を放つ、レナ。
激しい唸りを上げて、黒赤色の光条が、レナの放つ真紅の光と激突し、爆音が、響いて、凄まじい衝撃に、「んぅ・・・っ・・!!」レナの華奢な肢体が、激しく、揺らぎ、レナの纏っていた半袖のセーラー夏服とミニのプリーツスカートが、紅い光の嵐に裂き千切られて、微塵に吹き飛ぶ。
「レナ!!」レイナスの、悲鳴に近い、叫び。
紅い光の嵐が消えた後には、純白のハイレグビキニと、首にアメジストをあしらった純白のチョーカー、両の二の腕の半ばから両指先までを覆う純白の手袋、両太股の半ばから両つま先までを覆う純白のブーツを纏った、レナが。要所要所は悩ましく豊満でも折れそうに華奢な肢体が、清楚な色香を放つ白い柔肌が、可憐な臍が、容赦無くさらけ出されてしまっているが、傷も、打ち身も、一切、無い。
「・・レナ・・!」少し、安堵気味に、レイナス。
「・・万一に備えて、一番防御力の高い装備を身に着けてましたから・・!」少しふらついて、それでも、微笑んで、レナ。
レナの纏っている純白のハイレグビキニと、その他各種の純白の装備品は、全てが、あらゆる種類の攻撃から全身をガードする強力な魔力フィールドの発動体であり、金属製の全身鎧すら凌駕する優れた防御力を有しているのである。重量は最小限で関節部のパーツも無い為、この上なく動きやすい。
「レナちゃんごめん!、ガードし切れなくて!」油断無く、魔獣の群れを、スターダスト・リボン・ブレードと剣で、薙ぎ払いながら、申し訳無さそうに、マイカ。
「そんな・・!、わたしなら大丈夫ですから・・!」心持ち慌てて、レナ。
マイカとレナの様子に、ほのかに苦笑気味に、「・・っ!」レナを襲う二足歩行魔獣達を、油断無く、白銀の剣で斬って捨てる、レイナス。

「妙な魔力を感じたけど、大丈夫か・・!?」と、叫ぶ、声。
ほのかに厳しい表情で、駆け付けてきたのは、半袖の白のカッターに、黒の学生服のズボン姿の、アドニスだった。
左手に、竹ぼうきを握り締めて。
「敵の戦力が予想より強かったけど、何とか・・・って、その格好は、何・・?」唇を噛み締める様な表情で話しかけて、あきれた顔になる、マイカ。
「仕方ないだろう。居残りで校庭の掃除の途中だったんだ。」大真面目な表情で、アドニス。
目を丸くして、言葉も無い、レナ。
「・・帰れ、ここは危険だ・・!」あきれ果てた顔で、それでも言葉半ばから、何とはなく気遣う様な口調で、レイナス。
「心配ご無用・・!」不敵に、優雅に、微笑んで、意外な程隙無く、竹ぼうきを左脇に構えて、肩幅に両脚を捌いて、「・・僕は得物を選ばないんでね・・!」と、アドニス。
少し離れていた所で戦っていたリミアとレミリスが、近くに駆けてくる。
「・・余裕綽々ですね、アドニス様。」しれっと、微笑んで、レミリス。
「・・マイカ様がマイカ様なら、アドニス様もアドニス様で、全く、もう・・・!
!」頭痛に耐えかねる表情で、リミア。
子供っぽくどこか拗ねた様な表情で、「・・わたしだってここまでふざけてないと思うんだけど・・、」ふと、真剣な表情で、「・・ところで、学園の防衛態勢の方は・・?」
と、マイカ。
「万全だ・・!」と、自信たっぷりに、アドニス。

その頃、
「アメジスティア・アカデミー中等部」の各所では、大量に発生した、比較的弱い魔獣の群れを相手に、夏の学生服や夏の体操服姿等々の男子生徒達と、セーラー夏服や夏の体操服にブルマーや各種水着姿等々の女子生徒達が、
西洋剣、日本刀、竹刀、和弓、アーチェリー、薙刀、金属バット、バレーボール、バスケットボール、サッカーボール、ラグビーボール、新体操用の棍棒、リボン、フラフープ、応援団旗、妖しい自動小銃、妖しい6銃身バルカン砲、机、椅子、長椅子、折り畳み椅子、ゴミ箱、バケツ、大型スコップ、小型スコップ、草刈り用の鎌、消火栓のホース、出刃包丁、お玉、フライパン、中華鍋、圧力鍋、無水鍋、学園祭用の喫茶店の立て看板、裸婦の銅像、その他ありとあらゆる武器を駆使して、
時折り、怪しい魔力や怪しい技等々を放ちつつ、戦っていた。
大した怪我人は、何故か、出ていなかった。
 
 
 *5*
 
 
大型の蝙蝠型黒紫魔獣の群れが、一斉に、レミリスに襲い掛かる。
蝙蝠型魔獣達の、黒赤色の光を纏った数十対の鋭い鉤爪の乱舞に、「・・っ・・!」
レミリスの、悠然とした笑みが、消える。
咄嗟にレミリスの放った無数の黒紫の触手が、次々と、蝙蝠型魔獣達に撃ち落され、
レミリスの肢体に、鉤爪の群れが突き刺さろうとした、瞬間、
アドニスが、「フ・・!」殆ど無時間で、恐ろしく優美な、舞う様な、脚捌きで、手捌きで、どこか妖しく微笑みつつ、
レミリスの周囲に舞う蝙蝠型魔獣達を、一瞬で、全て撃ち落した。
アドニスの纏っているのが学生服でなかったら、手にしているのが何の変哲も無い竹ぼうきでなかったら、一体どんな光景になっていただろうか。
「・・うそ・・、・・動きが半分以上見えなかった・・。」愕然と、呟く様に、リミア。
「少しでも見えてれば上出来だよ、現段階では・・!」穏やかに、悠然と微笑む、アドニス。
「ほんとにもう、アドニスは女の子には甘いんだから・・!」少し拗ねた様に、でも、割りと軽い口調で、マイカ。
「・・成る程、竹ぼうきも強大な魔力を纏わせれば立派な武器か・・・!」幾本もの純白の光の矢で小型の蝙蝠型魔獣達を次々と撃ち落しながら、真面目に感心している表情で、レイナス。
「・・目指す所は遥か彼方か・・・!」アドニスの動作に、心打たれた様に、ほのかに唇を噛み締めて、レミリス。次の瞬間、周囲に空間転移で現れた大型の蝙蝠魔獣の集団を、レミリスは、凄まじいスピードで、手刀を、蹴りを、無数に放って、全て撃ち落した。
「・・同じ攻撃に二度遅れを取る程修行不足ではないつもりだが・・・!」そこはかとなく、意地になっている気配も、あったりする。
 
「・・マサカ、ココマデ、邪魔ガ入ルトハナ・・・!」
不意に、1頭の、二足歩行型黒紫魔獣が、言葉を放つ。
「!」レナが、震えて、レイナスが、鋭く、リミアが、厳しく、レミリスが、物思う様に、マイカが、意外な程鋭く、アドニスが、淡々と、鋭く、その魔獣に、視線を。
「・・貴様達の目的は何だ・・!?」と、レイナスが、厳しい声音で。
「・・素直ニ答エルトデモ思ッタカ?」嘲弄する様に、二足歩行魔獣。
「・・・・」魔獣の言葉に動じる様子も無く、鋭い眼差しで、魔獣の一挙手一投足を見つめている、レイナス。
 
不意に、黒紫の光を纏った十数頭の二足歩行魔獣が、空間転移で出現するのと同時に、手にした黒紫の弓から、十数本の黒紫の矢を、マイカ目掛けて一斉に放つ。
凄まじい勢いで襲い掛かる十数本の黒紫の矢を、「!」白銀の鍔無し日本刀の居合抜き一閃で、すべて斬り裂き、砕いてしまう、マイカ。
次の瞬間、砕かれた黒紫の矢が、灰色の霧と化して、マイカの肢体を包み込んだ。
「カオス・クラウド・・っ・・!!」唇を噛み締める、マイカ。
澄んだ紺色のハイレグビキニを纏っているマイカの、豊満な胸元に、胸の谷間に、二の腕に、大胆にくびれたウェストに、なめらかな背中に、豊かな腰に、優美に豊かな太股に、さらけ出された白い柔肌に、血の赤に灰色が混じり合って灰色の光を放つ、傷跡が、無数に、刻まれる様に、浮かび上がって、全身を裂き千切る程の、激痛に、思わず、マイカが、片膝を、突く。打ち震え、ほのかに、身悶えて。
「!!、マイカ様・・!!」
愕然と、駆け寄ろうとする、リミアに、「隙を見せるな!」と、レミリスが叫んだ時には、既に、何時の間にか手にしていた漆黒の剛剣で、レミリスが、リミアを背後から剛剣で斬り裂こうとしていた4体の二足歩行魔獣の内、2体を、斬り裂いていた。「!!」次の一瞬、身を翻したリミアの、純白の剛剣が、残りの2体の二足歩行魔獣を、斬り砕いて、無数の黒紫の光の粒に、飛び散らせる。
マイカの傍らで、「・・マイカさん・・この傷・・まさか・・混沌・・・!?」愕然と、震えて、レナ。
「だいじょぶ、傷自体は、もう、治ってるの。疼いてるだけ・・」震えながら、かろうじて微笑んで、マイカ。
右手で白銀の剣を構えてレナをガードしつつ、「・・俺の力でも多少の混沌なら浄化出来る・・!」と、左手をマイカの方にかざして、「神聖力による治癒」の純白の光を放ち掛ける、レイナス。
「・・気持ちはうれしいけど、レイナス君・・、」唇を噛み締めて、マイカを胸元に抱く、アドニス。「・・この傷は、僕でなければ治せない・・。」
アドニスの、全身から、膨大な、純白の光が、穏やかに、放たれて、アドニスと、その胸の中のマイカを包み込み、数瞬後、純白の光が、治まると、マイカの全身の傷跡は、消えていた。
「・・ありがと、」アドニスに、はにかんで、幼く微笑む、マイカ。
「・・もう大丈夫・・!」次の瞬間には、心持ちふらつきながらも、自分の脚で立ち上がり、剣を腰に、隙無く、構える。
「・・無理はするなよ。」と、心持ち苦く、微笑んで、両手から放った紫水晶の光で、それぞれ、紫水晶の光を纏ったペンタグラム(真円と、その真円上等間隔の5つの頂点を直線で結んだ、星を象った形状を、組み合わせた形状)を形成し、隙無く、構える、アドニス。
「・・アドニス、あんた・・、」愕然と、レイナス。
「・・さっきの竹ぼうきに込めたのは、凄まじい魔の力だった。でも、今マイカの傷を治したのは、凄まじい神聖力だ。あんた一体・・!?」
「・・レイナス君、」些か苦笑気味に、穏やかに、微笑んで、アドニス。
「・・君だって、魔を体内に宿しながら神聖力を行使し、立派に聖騎士として戦ってるじゃないか。」
白銀の剣を改めて構えつつ、「・・はぐらかすなよ。」と、心持ち面白くなさそうに、レイナス。
「・・訳ありでね。」隙無く構えつつ、悠然と、アドニス。
 
「・・サスガダナ・・、」と、1頭の二足歩行型黒紫魔獣が、アドニスを睨みつつ。
「・・貴様ノ目的ハ、何ダ?。貴様程ノ者ガ、何ノツモリデコンナ惑星ヲ護ッテイル・・?」
「・・・・」淡々と、微笑んで、沈黙しているアドニス。
「・・俺も訊きたいなそれは。」と、真剣な表情で、傍らのアドニスに視線を投げ掛けつつ、レイナス。
「・・この学園は、ある惑星のある島国の沖合いに浮かんでいる、人工島の中心に位置していてね・・、」微笑みつつ、アドニス。「・・この学園には、その島国を含めた、この惑星を守護するという役割があるんだよ・・。」
「・・・・」黙って聞いている、レイナス。
「・・この学園の放つフィールドに魔物を引き付けておいて撃破する事で、惑星自体は魔物に襲われずに済む様にしてるんだ。」
「言っとくけど、アドニスはあなた達を戦いに巻き込むつもりでこの学園に「召喚」したわけじゃないの!。・・もちろん、一緒に戦ってもらえたらうれしいなとは思ってたけど、でも、強制するつもりは、なかったの!。結局、巻き込んでしまったのは、悪い事したって、思ってるけど・・。」懸命な口調で語り掛けて、やがて少し俯き気味に、マイカ。
「・・俺なら構わない。俺の剣が、誰かを護る為に役に立てるなら、その事を騎士として誇りに思える。でも、レナを危険に巻き込んだのは・・。」少しつらそうに、レイナス。
「!、レイナス様が危険なのに、わたしだけ安全な所にいるなんて、嫌です!」懸命に、真っ直ぐな瞳で、レナ。
「・・レナ・・・」心打たれて、レイナス。
 
「・・アンナ島国ノ、ドコニ、護ル価値ガアル・・?。」嘲笑う様に、二足歩行魔獣。
「・・人ノ心ニ正義ナド無イ、命ノ尊サモ愛ノ尊サモ見失イ、子供ガ子供ヲ殺ス様ナ国ヲ、身体ヲ張ッテ護ルダト・・?。金ノ為ニ戦争ヲ起コシ、人ノ命ヲ放射能デ汚ス国家ガデカイ顔ヲシテノサバル星ヲ、護ルダト・・!?、正気カ、貴様ラ・・!!?」
明らかに、嘲笑って。
「・・あの国にも、この星にも、つらい思いをしながら、痛みを感じながら、その人なりに精一杯生きてる善良な人が、たくさんいるの。だから、護るの。愛と正義の戦士、ムーンフェアリーの名にかけて・・!」真っ直ぐな瞳で、きっぱりと、マイカ。
「・・偽善ダナ。」せせら笑う、二足歩行魔獣。
「・・わたしの事を偽善と呼ぶあなたは、何・・?。」ほのかに揺らめいて、それでも、真っ直ぐな、瞳で、マイカ。「・・人と人が傷付け合う、心の歪みに、弱みに、つけ込んで、傷付けたい、壊したい、殺したいっていう、自分の衝動を満たす事を、正当化しようとしているだけでしょ・・?」静かな、声音。
「・・わたしが、完璧な正義だなんて、思ってない。完璧な正義なんて、神にだって実行できっこない。わたしは、わたしに出来る範囲で、人を、心有る存在を、護ろうとしてるだけ・・!」
「・・貴様ニモ言ッテオクガ・・、」
歪んだ笑みを浮かべたまま、レイナスに視線を投げ掛ける、二足歩行魔獣。
「・・コンナ奴ラニ荷担シタ所デ、決シテ報ワレハシナイ。空シイダケダゾ・・?」
「・・貴様なぞの言う事に惑わされはしない・・!」どこか不敵な、凛々しい笑みを浮かべて、レイナス。
「・・俺は、マイカ達を信じる。俺の剣が、命を護る力になれるなら、空しく思う必要が、どこにある・・!?」
「・・レイナス様・・、」心打たれて、頬を染めて、レナ。
「・・わたし、わたし今、わたしの出来る限りで、レイナス様の力になりたいって、思ってます!。頑張ります・・!!」
「・・レナ・・。」心打たれて、レイナス。
 
「・・レイナス様ノ、力ニナリタイ・・ダト・・・!!?」
二足歩行魔獣が、唇を歪めた、その瞬間、レナの姿が消え、次の瞬間、二足歩行魔獣の周囲に、膨大に、無数に、灰色のバラの蔓が、くねり、迸って、全高約4メートル、直径約6メートルの灰色のバラの蔓の集合体の中央に、純白のハイレグビキニ姿のレナが、空間転移の光の余韻と共に、現れて、レナの肢体に、四肢に、さらけ出された白い柔肌に、無数の、激しくうねる、棘にまみれた灰色のバラの蔓が、凄まじい勢いで、絡み付く。
「・・っ・・・ぐぁ・・ぁああ・・っ・・・ぅああああ・・!!!!」無数のバラの蔓に、肢体を、四肢を、激しく、締め上げられ、レナの、骨格が、酷く、軋み、レナの肉体に無数のバラの棘がくい込んで、無数の細い鮮血の筋が、レナの柔肌を、伝っていく。
激痛に、身悶えるレナの肢体に、その身悶える動きで、無数の棘がさらにくい込む。
「!!、レナアアアアアアッッ!!!!!」
叫んだ瞬間には既に、レナを傷付けているバラの蔓を撃ち砕こうと、レイナスの左手から十数本の激しく輝く純白の光の矢が迸り、その純白の光の矢を、バラの蔓の集合体が、苦も無く灰色の光の波紋で弾いて消滅させた瞬間には、既に、バラの蔓を斬り裂こうと、レイナスが、白銀の剣を振りかざして、跳躍していた。
レイナスの剣が、レナを拘束しているバラの蔓を斬り裂く、寸前、バラの蔓が、激しく、レナの肢体を動かして、
「・・ぅあ・・!!!」無数の棘で一層レナを傷付けながら、レイナスの剣を、レナの肢体で受け止め様と。
「!」危うくレナを斬ってしまう寸前で、必死に、白銀の剣を止め、愕然と、動きの止まってしまったレイナスの、一寸の隙を逃さず、
無数の灰色のバラの花が、灰色の閃光と共に、凄まじい衝撃波を、レイナス目掛けて、放つ。
「!!」咄嗟に、完璧にタイミングを合わせて、純白の剛剣を手にしたリミアと、漆黒の剛剣を手にしたレミリスが、ラベンダーを刷いた純白の羽根を、漆黒の羽根を、羽ばたかせて、突撃し、レイナスの眼前に割って入って、レイナスが衝撃波に撃たれる一瞬前に、純白の剛剣で、漆黒の剛剣で、衝撃波を、斬り砕こうと。
「ぅ・・ぅう・・っ・・!!!!」リミアが、「・・っ・・・!!」レミリスが、剛剣で受け止めた衝撃波の威力に、打ち震え、「・・っ・・・ぅあああああっ!!!!!!」ついに、耐えかねて、背後のレイナスごと、衝撃波の激しい渦に巻き込まれて、吹き飛ばされてしまう。
地面に激しく叩き付けられて、それでも、「・・っ・・・!」リミアが、身を揺るがせながら、両手で膝を突いて、懸命に、「・・・・」レミリスが、身を震わせながら、唇を噛み締めて、「・・この・・っ・・・!!」レイナスが、酷く打ち震えながら、必死に、
二足歩行間獣を睨み据えて、立ち上がりかけたその時には、第二波の、一層凄まじい衝撃波が、無数の灰色のバラの花から、止めとばかりに、リミアを、レミリスを、レイナスを目掛けて、放たれていた。
「!」リミアが、レミリスが、レイナスが、撃たれた、と、思った、その瞬間には、マイカが、アドニスが、レイナス達3人をかばって割って入り、「ハァ・・ッ!!」マイカが、鞘に収めた白銀の日本刀を両手で垂直に構えて、「・・ッ・・!!」レイナスが、両手でそれぞれ一個ずつの空中浮遊するアメジスト・ペンタグラム(紫水晶のペンタグラム)を操作して、防御フィールドを形成し、灰色の凄まじい衝撃波を受け止めていた。
灰色の衝撃波が、防御フィールドの波紋にかき消されるのと、アドニスの身に着けていた学生服が何箇所も裂けて、半袖の白のカッターは完全に千切れ飛んで上半身は肌がさらけ出されてしまうのが、同時であった。
アドニスの全身に、無数の、血の赤に灰色が混じり合って灰色の光を放つ傷跡が、浮かび上がり、激痛に、揺らぐ、アドニスの肢体を、「アドニスッ!」咄嗟に、マイカが抱き締めて、マイカの全身から、優しく、放たれる、純白の光が、アドニスを包み込み、アドニスの全身の無数の傷を、癒していく。
「・・我ながら不覚を取ったな・・、・・助かった・・。」と、マイカに、アドニス。
「今はその事よりもレナちゃんを・・!」と、ほのかに息を弾ませつつも、冷静に、マイカ。
「ああ・・!」と、震えながらも、自分の足で立ちあがる、アドニス。
 
「・・力ニナルドコロカ、足手纏イダナ・・・?」と、灰色のバラの蔓に苛まれるレナを、嘲笑う様に、二足歩行型黒紫魔獣。
「・・・!!」瞳に涙を浮かべて、打ち震える、レナの、みぞおちの辺りの柔肌から、不意に、紅紫の光が迸り、紅紫の光の奔流の中から迸った幾本もの直径2センチ程の紅紫の触手が、その先端の蛇頭の牙で、レナの肢体を拘束しているバラの蔓を、噛み裂こうと、一斉に。
激しくうねる無数の灰色のバラの棘に、傷付けられながら、それでも、バラの蔓と戦い続ける、紅紫の触手達。
それでも、無数のバラの蔓は、わずかに傷付く側から見る間に自己修復していく。到底、レナを解放出来る目処は、無い。
「!、駄目!、わたしの事はいいから!、逃げて!!、あなた達だけなら脱出できるから・・!!」と、紅紫の触手達に、激しくうねるバラの棘に自分自身が傷付けられながら、泣きながら、懸命に、レナ。
「・・ホウ・・?」些か意外そうに、二足歩行魔獣。
「・・犯サレテ孕マサレタ、ソレモ触手ヲ、自分ガソノ有様デ、気遣ウ、ダト・・?」
心持ち、うつむいて、幼い頬を涙で濡らして、「・・姿形は触手でも、レイナス様の御種を頂いて、宿した、レイナス様と、わたしの、子供達です・・!。
こんなに、傷付いても、わたしの事を、助けようと、してくれて、・・いい子達です・・!!」それでも、真っ直ぐに、レナ。
(!)レナの言葉に、心打たれる、リミア。(・・姿形のみで、生きとし生けるものを別け隔てする事は、聖なる掟の守護者たる天使の本分に、反すると知れ・・。
レナちゃんは、人の身で、並の天使以上に、その事を解ってる・・・!)
思わず、「古代聖天書紀」に記載された最高位の天使セラフィムの長たる、セラフィム・ロード・ミカエルの言葉を、思い出してしまっている。
「!、レナアッ・・!!!!!」思わず、叫ぶ、レイナス。
「・・サアドウスル・・!?」不敵に、二足歩行魔獣。「・・コノバラノ蔓ハ、並ノ力デハ破レン。コノバラヲ破ル程ノ攻撃ヲ加エレバ、コノ娘モ死ヌゾ・・!!?」
「!」「・・・」リミアも、レミリスも、唇を噛み締める。二足歩行魔獣の言葉が正鵠を射ている事が、分かっている。
「・・レイナス様・・、」泣きながら、唇を噛み締める、レナ。
「・・このままだと、みんなも、レイナス様も、衝撃波でやられてしまいます・・!。・・お願いです、わたしごと、このバラを、斬って下さい・・!!」震えて。
「!、そんな事が出来るかあっっ!!!!!!」絶叫する、レイナス。
(・・奥の手使うわよ・・!)密かに、精神波動で、アドニスに話し掛ける、マイカ。
(・・使うか・・!)唇を噛み締める、アドニス。
(・・レナちゃんを死なせる訳にはいかないもの・・!!)真っ直ぐな瞳で、マイカ。
「・・お願いです、レイナス様・・、死ぬなら、せめて、レイナス様の、手で・・・!」泣き崩れる、レナ。
その、愛らしい、面差しを、黒紫の獰猛な手指で、少し捻り上げる様に、
「・・コノ娘ノ達テノ望ミダ、叶エテヤッタラドウダ・・?」歪み切った嘲笑を浮かべて、二足歩行型黒紫魔獣。
「!!」レイナスの体内から、紅紫の光の奔流が。
「レナを、放せえええええっっ!!!!!!!」
絶叫と共に、レイナスの肢体は、紅紫の光を纏った輝く無数の触手へ、一瞬後には、優美に、複雑な曲線軌道を描いて、乱舞する、無数の帯状の紅紫の輝光に、変化して、レナを苛んでいる、無数の灰色のバラの蔓目掛けて、宙を斬り裂いて、迸った。
 
 
 *6*
 
 
「!、レイナス君・・!!?」茫然と、見守っている、リミア。
無数の灰色のバラの花から、第二波の衝撃波に優るとも劣らぬ、凄絶な、第三波の灰色の衝撃波が、紅紫の輝光に変化したレイナスに、襲い掛かる。
紅紫の輝光が、レイナスが、灰色の衝撃波を、波動で撃ち砕き、逆に内側から外側へと拡散する灰色の波紋に変えて消滅させ、
無数のバラの花を守る灰色の光の波紋をも、一瞬で、螺旋の波動で捻り裂いて、消滅させ、レナの肢体を、四肢を、さらけ出された白い柔肌を、苛み、えぐり、拘束している、無数の灰色のバラの蔓を、一瞬で、斬り砕き、消滅させてしまう。
無数の、優美に交錯し合う、鮮やかな紅紫の輝光の曲線が、全身酷く傷付いたレナの肢体を、彩る様に、優しく、包み込む。
紅紫の輝光に、織り込む様に、無数の純白の輝光が、美しく舞いながら、レナの傷を、全て、癒していく。
紅紫の輝光が、凝集し合い、純白の甲冑を纏ったレイナスの姿に変化して、レナの肢体が、レイナスの胸元に、抱きかかえられて。
「・・レイナス様・・・」頬を染めて、瞳に涙を浮かべて、言葉を失う、レナ。
「・・レナ・・・」酷く消耗して、それでも、穏やかに、微笑む、レイナス。
 
不意に、「!!」レイナスが、レナの肢体を突き飛ばすのと、そのレイナスに、瞬時に再生した無数の灰色のバラの蔓が絡み付くのが、同時であった。
「レナちゃん!!」咄嗟に、羽ばたいて突進したリミアが、レナの肢体を支え、すかさずレミリスが、リミアをサポートして、レナを二人で支えて素早く無数のバラの蔓から離れ、マイカと、アドニスが、瞬時にリミア達3人の援護体勢に入る。
 
二足歩行型黒紫魔獣が、「・・貴様ダ!、最初カラ貴様ガ狙イ目ダ・・!!」と、灰色のバラの蔓に、拘束されたレイナスに。
 
「!!、レイナス様あっ!!!!!!」レナの、絶叫。
 
「・・俺だと・・・!?」と、鋭い瞳で二足歩行魔獣を睨み据えながら、レイナス。
「・・貴様ハコレヨリ、我等ノ手先ニナル・・!!」口元を歪めて笑みを浮かべつつ、二足歩行魔獣。
「何を・・!?」
「貴様ニ!、アノ『レナ』トヤライウ小娘ヲ幸セニスル事ガ、出来ルノカ!!?」
「!!」愕然と、言葉を失う、レイナス。震えて。
(・・コノ、心ノ弱ミガアル限リ、コ奴ハ逃レラレン・・・!!!)嘲笑う、二足歩行魔獣。
 
無数の灰色のバラの蔓が、レイナスの纏う純白の甲冑を、締め上げ、砕いていく。
純白の甲冑が、上半身は着衣ごと完全に砕け散り、下半身も酷く砕かれ、
「・・っ・・・ぐぁ・・ぁ・・!!!!」
苦悶する、レイナスの肢体に、無数のバラの蔓が絡み付き、くい込み、無数の灰色のバラの棘が、レイナスの肉体を、えぐる。
 
「・・レイナス様・・・!!!」愕然と、レナ。
 
「・・今カラオ前ニ混沌ヲ注ギ込ミ、完全ニ我等ノ眷属トシテクレル!。愛スル者一人、幸セニ出来ヌ貴様ニハ、似合イトイウモノダ・・!!!」
 
「このままじゃレイナス君が・・!!」悲鳴気味の声で、リミア。
「レイナスごと斬れば話は早いが・・」鋭く状況を見据えつつ、レミリス。
「!、レミリス!!」怒りの声を上げる、リミア。
「・・そんな事は絶対に出来ないしな。」淡々と、レミリス。
 
「・・馬鹿・・、・・俺ごと・・その剣で・・斬れ・・!!!」無数のバラの蔓に苛まれながら、かろうじて、レミリスの瞳を見据えながら、レイナス。
「無理を言うな。」漆黒の剛剣を手に、やはり、淡々と、状況を見据えながら、厳しい眼差しで、レミリス。
「抵抗ハセヌ事ダ・・!」二足歩行魔獣の言葉と共に、
「・・っ・・・うぁ・・!!!!!!」一層深く、レイナスの肉体をえぐる、無数のバラの棘。
 
(・・今度こそ奥の手を・・!)と、マイカ。
(・・・!)無言で呼応し、構えを取る、アドニス。
 
不意に、リミアに支えられていたレナが、リミアの手をそっと振り解き、自分の両脚で立って、数歩、踏み出し、左手で、魔杖を構える。
「・・レナちゃん・・?」心配して、不安げに、リミア。
 
「・・レイナス様を・・、・・邪悪の手先にしようだなんて・・、・・レイナス様の・・想いを・・踏み躙ろうと・・するなんて・・・」
静かに、二足歩行魔獣立ちを見据える、レナの、瞳に、凄まじい、威が、秘められて。
「・・・許さない・・・!!」
 
レナの、全身から、紅紫の光が迸り、
レナのみぞおちの辺りの柔肌から、紅紫の光の奔流が、その中から、十数本の紅紫の触手が、現れる。
レナの足元の地面に、レナを中心として、紅紫の、真円と、その真円上の等間隔の6頂点を直線で結んだ、星を象った形状を、組み合わせた、光の魔方陣が、2重に、形成される。
レナのみぞおちの辺りから表れた紅紫の触手達が、紅紫の輝きに姿を変えて、その魔方陣の、12箇所の頂点に、あるいは、円上を高速で周回する軌道に、自らを配置し、紅紫の輝き達に、能力を増幅されて、魔方陣の紅紫の光も、一層、強く。
レナの、瞳は、焦点が遥かに遠く、紅紫の光を、放っている。
 
リミアも、レミリスも、マイカも、アドニスも、言葉も無く、様子を見守っている。
 
レナの、可憐な声音が、唇から漏れる。
「・・ラウティート・ナグ・レウスウォード・・!!、・・ディメンジョン・ゲート・・!!!」
 
「馬鹿メェ!!!、次元転移如キデコノバラカラ逃レラレハ・・何イッ!!!?」驚愕する、二足歩行魔獣の、眼前で、
灰色のバラの蔓に拘束されたレイナスの姿が、紅紫の光に包まれて、消え去り、レナの背後の空間に水平に出現した、もう一つの紅紫の光の魔方陣の上に、横たわった姿で、バラの蔓が、バラの棘が、全て取り除かれた状態で、レイナスの肢体が。
 
レナの、可憐な声音に、殺気が、秘められて、
「・・ゼクウォート・ナグ・バルスウォード!!、ディメンジョン・ディスインテグレイト・・!!!」
 
レナを中心とした紅紫の光の魔方陣が、凄まじい、紅紫の光を、放ち、レナが左手で構えた魔杖から、凄まじい、紅紫の閃光が、放たれて、次の瞬間、
先刻までレイナスを苛んでいた無数の灰色のバラの蔓が、紅紫の閃光に、引き裂かれ、微塵に砕かれ、紅紫の閃光の、その深淵に、撃ち落され、
僅かな欠片も残さず、完全に、消滅した。
 
「・・コレハ・・、コノ威力ハ・・、『次元』デハナイ・・ッ・・・!!」愕然と、
呟く様に、二足歩行魔獣。
 
不意に、レナの、瞳の、紅紫の光が消え、可憐な瞳が閉じられて、紅紫の魔方陣が消え、レナの肢体から放たれていた紅紫の光が消え、
レナの肢体が、背後の方へと倒れかけ、紅紫の触手達が姿を変えた紅紫の輝き達が、慌てた様に、レナの肢体を包み込む様に支え、支えていた空中の紅紫の魔方陣が消えて地面へと落ちかけるレイナスの肢体を、そっと浮かばせる様に支えて、緩やかに地面へと寝かせて、
その傍らに、レイナスとレナの腕と腕が重なる様に、レナを、寝かせる。
 
「・・!」黒紫の二足歩行魔獣の眼が、黒紫の光を放ち、呼応する様に、十数頭の黒紫の二足歩行魔獣が現れて、横たわるレナとレイナス目掛けて、突撃する。
「させるもんですか・・!!」
すかさず、リミアが、その十数頭の群れの真っ只中に純白の剛剣で斬り込んで、一瞬で2頭斬り裂いて魔獣達の突撃を止め、同時にレミリスが、無数の黒紫の触手を放って、レナとレイナスの周囲に張り巡らせて、防御体制を取る。
 
(コノ隙ニ退却・・!)と、唯一言葉を発していた二足歩行魔獣が、空間転移の前兆の光を、足元に発生させた、
その瞬間、
爆音と共に、蒼い光の銃弾が、二足歩行魔獣の足元の光を撃ち抜き、消してしまう。
怒りも露わに、紺色の拳銃を太股のガンケースに収めた瞬間には、
マイカは、蝶の羽の形の光の羽根を展開して、二足歩行魔獣目掛けて、殆ど光速で、空間を飛翔していた。
「・・人の恋路を邪魔する奴は・・、斬る・・っ・・!!!!!」マイカの、叫びと、同時に、
黒紫の二足歩行魔獣は、マイカの白銀の鍔無し日本刀の、抜刀一閃で、一溜りも無く、両断され、
マイカが、鞘に刀を収め、澄んだ音が小さく響いた瞬間、
黒紫の二足歩行魔獣の両断された体は、爆砕され、無数の光の粒子に飛び散って、完全に、消滅した。
 
マイカが飛翔すると同時に、空間転移の閃光と共にリミアとレミリスのサポートに入ったアドニスが、
両手指を華麗に捌いて、二つのアメジスト・ペンタグラムを宙に激しく舞わせ、黒紫の二足歩行魔獣達を、ペンタグラムの紫水晶の光の縁で、一瞬で、1頭残らず無数に斬り裂き、無数の紫水晶の光の粒子に、砕き、散らせた。
「・・あ、・・ありがとうございます、アドニス様・・。」(・・やっぱり、アドニス様の技が、見切れない・・。)少し茫然と、ほのかに頬を染めて、リミア。
「いや、僕も何だか、こいつ等に一撃御見舞いしたい心境だったから。」微笑んで、アドニス。
「あまりリミアを甘やかさないで下さいよ、アドニス様。このぐらいの敵なら、リミア一人で対処するべきだ。」わざとらしく苦い顔をして、レミリス。
「悪い事したかな。」しれっと、微笑んで、アドニス。
「リミアはもっと厳しくいじめた方が修行になっていいんです。」きっぱりと言ってのけるレミリス。
拗ねて、「レミリスは意地悪したい方が先に立ってる様な気がするんだけど・・!、
あ!、それどころじゃなくて!、レナちゃんとレイナス君は・・!?」ふと、急に慌てて、リミア。
 
ふと、瞳を開く、レナ。
慌てて起き上がり、「レイナス様・・!!?」と、傍らに寝ている、傷まみれのレイナスの容態を、慌てふためいて、「魔力による感知」で、診察し始める。
傍らにいたマイカが、「大丈夫。混沌の力には、レイナス君自身の神聖力で抵抗してるし、深い傷は、無いから・・。あ、すぐ、傷は治すから・・!」と。
「あ、わたしに・・、させて下さい・・。」はにかんで、少し頬を染めて、レナ。
「・・レナちゃん・・。」ほのかに頬を染めて、見つめる様な瞳で、マイカ。
一層、頬を染めつつ、レイナスの肢体の無数の傷に、華奢な手指をかざしていくレナ。
その、レナの手指から、鮮やかな紅紫の光が放たれて、レイナスの傷が、見る間に、跡形も無く消えていく。
レイナスの、瞳が開かれて、「・・レナ・・・」と、起き上がり掛けるのを、
「あ、もう少し、・・横になっていて下さい・・・」と、そっと、一旦止めて、レナは、レイナスの無数の傷を、紅紫の光で、全て、完全に癒した。
「・・レナ、」起き上がりつつ、レイナスが、「・・この、力は・・・」と。
「はい・・、」ほのかに陰を帯びて、微笑んで、
「・・暗黒・・魔術です。今まで、源素魔術の治癒は、高レベル過ぎて、わたしの能力では、出来なかったんですけど、これからは・・・」と、レナ。
何時の間にか傍らに来ていたレミリスが、「・・成る程、膨大に肉体に注ぎ込まれたレイナス君の触手の遺伝子の能力を、子宮内部の子供達のサポートを得て、行使している訳だね。」と。
真紅に頬を染めて、レナ。
「・・はい、毎晩、その、伽のお相手を、させて、頂いてますから・・・。」
頬を染めて、
「そういう事を無神経に女の子に聞いたりするんじゃないの!!。レナちゃんも!、素直に答えたりしないの!!」と、背後からレミリスの首に両腕を絡めて、チョークスリーパーホールドで締め上げる、リミア。
レミリスの意外に逞しい背中の感触を、胸で感じながら。
「・・ああ、リミアの乳房の感触が心地良い・・・。」と、悠然と微笑んで、レミリス。
「!!、このおおおおおっっ!!!!!」と、真紅に頬を染めて、両腕でレミリスの首を締め上げたまま、回転しつつレミリスの肢体を激しく振り回すスイングスリーパーホールドに移行して、激しい勢いで空高くレミリスを放り投げ上げる、リミア。
声も上げずに空高く放り投げ上げられたかと思うと、捻りを加えた横回転で優雅に宙を舞いつつ、何気無く、レイナスの傍らに着地する、レミリス。
「・・つまり君は、毎晩触手化してレナ君を餌食にして妊娠させている訳だ・・。・・レナ君、身が持つのか・・?」淡々と。
一層頬を染める、レナ。
「・・俺の診察では、現時点では、辛うじて問題は無い、あ、いや、問題は有るんだが、健康上は、何とか、・・確かに、疲労はさせてるんだが・・・」と、陰を帯びて、レイナス。
「あ、大丈夫です、疲労回復もわたしなりに気を使ってますから!」と、どこか懸命な口調で、レナ。
「しかし、このままレナ君の子宮内部の子供の数が増えていったらだな・・・。」
と、腕組みして、レミリス。
「・・確かに、放っては置けない問題だ・・。」と、マイカの方に視線を向けて、
「・・あんたなら、何らかの対処が出来るんじゃないかと、思うんだが、その、恥を忍んで、頼みたいんだが・・・。」と、真剣な眼差しで、レイナス。
「だいじょぶなんじゃない?」無邪気に、微笑んで、マイカ。
「・・レイナス君とレナちゃんの子供で、いい子達なんでしょ?。そんなに心配しなくていいんじゃないかなあ?」
「・・あのな。」頬を染めて、納得し切れない顔で、戸惑って、レイナス。
「・・・・」頬を染めて、恥らいつつも、微笑んで、自分のお腹に手をあてがう、レナ。
微笑みつつアドニスが、「まあ、もし何かあっても、この学園にはあらゆる医療設備がそろってるし、親子全員そろって健康に暮らせる様、可能な限りのフォローはさせてもらうよ。」と。
「・・すまない。」頭を下げる、レイナス。
「こういう時は謝ったりしないでいいと思うんだけどなあ。」苦笑する、アドニス。
少し苦く、微笑みつつ、「・・レナ・・、」と、レイナス。「また、レナには助けられたな・・。」
可憐な頬を真紅に染めて、
「そんな・・!、わたしこそ、レイナス様に助けて頂きましたから・・・!。」と、レナ。
少しうつむいて、レイナス。
「・・俺は、レナにはいつも助けられてばかりだ。苦労ばかりかけてる。・・俺は、いつになったら、レナを護れる様になるんだ・・?。」
「そんな・・!!、」懸命に、レナ。
「・・レイナス様には、十分、護って頂いてます。わたしの方こそ、もっと、レイナス様の為に出来る事を見付けて、もっと、頑張らなきゃ・・・!」
そのレナの華奢な肩に手を置いて、「これ以上、頑張り過ぎるな。」と、心配そうに、レイナス。「無理、するな・・。」そっと、レナを、抱き締めて。
「・・レイナス様・・・。」頬を染めて、レナ。
二人共、暫し、言葉にならなかった。互いの心臓の鼓動を、ただ、感じて。
「・・・・いつまで二人の世界を創ってるつもりなんだい?」と、ほのかに苦笑気味に、それでも、意外なほど温かく微笑みつつ、レミリス。
「あ、ばか、こら、邪魔しちゃ駄目でしょっ・・!!」と、言った時には既にレミリスの後頭部を拳で殴っている、マイカ。
「・・本当にもう無粋と言うか何と言うか・・!」と、リミアなりには軽く殴ったつもりで、実の所結構勢い良く、レミリスの後頭部にリミアの拳が。
「・・おう。」大して応えている様子も無く、後頭部を押さえる、レミリス。
「!、そう言えば・・!、」不意に、レイナスが、「・・マイカ、それに、アドニス、あんた達、混沌の傷を負ってるんだろう?。大丈夫なのか?」
わずかに戸惑った様に、「大丈夫、何ともないって・・!」無邪気な笑顔で、マイカ。
微笑んでいる、アドニス。
「でも・・、」気遣う様に、レナ。
「・・混沌の傷は、表面上は直った様に見えても、肉体の深部に混沌のダメージが残って、通常の治癒魔術とかでは治らないって・・。」
「・・無理、してるんじゃないのか・・?」と、心配そうに、レイナス。
「・・心配される様な事は、無いよ。」と、静かに微笑んで、アドニス。
穏やかに微笑んで、マイカ。
リミアが、少しうつむいて、
「・・本当は、マイカ様も、アドニス様も、前の戦いの傷が癒えてなくて、リハビリ中なの・・。」
(・・素直に言わなくていいのに・・・)少し苦笑する、マイカ。
「・・無理、させたか・・?」と、つらそうに、レイナス。
「大丈夫!。これぐらい身体動かした方がリハビリにはかえっていいし、それに、レイナス君も、レナちゃんも、リミアちゃんも、レミリス君も、大活躍してたから、無理しなくてすんじゃったから・・!」屈託無く微笑んで、マイカ。(・・本当に無理しなくて済んだもんねー、レイナス君とレナちゃんの潜在能力のおかげで・・。)
と、アドニスのみに伝わる精神波動で、苦笑気味に。
(・・全くだ。)と、マイカのみに伝わる精神波動で、微笑みつつ、アドニス。
「・・気になってる事がある。」と、レイナス。
「・・あの黒紫魔獣は、俺が狙い目だと言ってた。触手に犯されてる俺を、邪悪な混沌の眷族にするんだと・・。・・あんた達は、俺を助ける為に、俺とレナをこの学園に召喚して、無理して戦ったんじゃ、ないかと・・。」うつむいて。
ふと、真剣な眼差しで、
「・・正直、レイナス君が敵に回ったら嫌だな、とは、思ってたけど。」微笑んで、マイカ。
「・・レイナス君の為に無理したって訳じゃなくて、わたし達の為に、戦ったの。気にする事ないわよ。」穏やかに。
「元来、邪悪な混沌の勢力にとっては僕達は敵だからね。その僕達の目の前で君を眷族に取り込めば、僕達に敗北感を与える事も出来るし、君を手駒として使えば僕達は戦いにくくなり、奴らは戦略的に有利になる。そう、考えたんだろう、奴らは。
その目論見を撃ち砕いたのは、レイナス君、君と、レナ君の力だよ。むしろ、君達には、感謝すべきだろうね。」静かに微笑みつつ、アドニス。
うんうんと、笑顔で微笑んでいる、マイカ。
「・・そう言ってもらえると、ありがたい。」少し御辞儀しつつ、レイナス。
頬を染めて、何と応えて良いか困っている、レナ。
「さて、問題はこれからだ。」しれっと、レミリス。
「・・この学園は、この惑星を守護する為に戦っている。この惑星の人間達自身の心が招き寄せている邪悪から、だ。要するに、この惑星の人間達の尻拭いだ。・・君達付き合うかい、本当に・・?」
「別に、無理して付き合わなくても、いいのよ・・?」どこか、懸命な口調で、リミ
ア。「・・わたし達であなた達の事、護れるし、戦うも戦わないも、あなた達の自由
意志だから。あ、レミリスのいやみとか皮肉とか意地悪とかは、気にしないでいいか
らね・・!」殊更に言葉を少し強い口調で付け加えて。
苦笑する、レミリス。「どう見ても、僕のいやみとか皮肉とか意地悪とかを一番気に
してるのはリミアなんだけどなあ。」
「!、当たり前でしょ!!、レミリスのいやみや皮肉や意地悪の一番の被害者はわた
しなんだから・・!!」面差しを真っ赤にして、リミア。
「・・リミア、可愛いから。」ぽつりと、レミリス。意外な程、本気の口調で。
「!!!!」凄まじく面差しを紅く染めて、全身全霊を込めた蹴りを、アドニスのこ
めかみに凄まじく撃ち込む、リミア。リミア本人が普段「天使にあるまじき」などと
言っている、大胆極まりなく股を広げて脚を上げた格好で、しかも、ラベンダーを刷
いた純白のハイレグビキニを可憐な股間に思い切り良くくい込ませて。
「これだ!、この蹴りだ・・・!!」などとほざきつつ、宙の彼方へ飛んでいく、レミリス。
「一つ、気になる事がある。」真剣な口調で、アドニスとマイカに、レイナス。
「・・何だい?」と、アドニス。
「・・元、立憲君主国の皇子として、敢えて言う。」と、レイナス。
「・・父にも何度も言われた事なんだ、人民が負うべき政治的責任を、王室の者が代わりに負ってはならない、あくまでも、人民自身が政治的責任を負い、王室の者はそのサポートをするだけなのだと。・・それと同じ事じゃないのか?。邪悪を呼び寄せているのがこの星の人間達の心なら、この星の人間達が、責任を負って対処して、俺達はあくまでも
そのサポートをするだけ、そうあるべきじゃ、ないのか・・?」
「・・良い意見だ。」微笑んで、アドニス。
「・・出来たら、そういう見識を持った人間に、力を貸してもらえれば、有り難い。この惑星の人間達が、自分達の責任で、邪悪を呼び寄せないで済ませる、そういう方向性を見出せるまで、この惑星を護る、その為に。」
ふと、沈黙する、レイナス。
「あ、あの、無理に付き合ってって事じゃないからね、ほんとに・・!」少しあせった様な口調で、マイカ。
「そこまで気にしなくていい。」苦笑気味に、微笑んで、レイナス。
「・・俺で良ければ、一緒に戦わせてくれ。」
「わたしも・・!」些か滑稽な程に、懸命に、レナ。
「・・ありがと。」微笑んで、マイカ。
 
 
こうして、戦士達は、超常学園に終結した。
戦士達の戦いは、これから始まる。













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